アイドルとクラウド・ファンディングが相性が良い6つの理由 | 外資系戦略コンサルタントの視点から見たアイドル・ビジネス

2013/11/15

アイドルとクラウド・ファンディングが相性が良い6つの理由



最近アイドルがクラウド・ファンディングを活用する事例が増えてきている。

一例としては、
avexのSUPER☆GiRLS擁するアイドル・プラットフォームのiDOL Streetによるhanarichuのデビュー資金獲得のためのプロジェクトや、
同じくavexの東京女子流による映画作成における一部分(宣伝配給費)を獲得するためのプロジェクトなどである。

hanarichuは100万円の目標額に対して241人のパトロンと160万の資金獲得によって終了し、
東京女子流は300万円の目標額に対してまだ募集期間が2週間以上残っているにもかかわらず172人のパトロンと380万円を獲得している。

・【hanarichu】
http://camp-fire.jp/projects/view/735

・【東京女子流】
http://camp-fire.jp/projects/view/835

・その他
【AeLL.】
http://shootingstar.jp/projects/173

【ももクロ】
http://momochro.com/2ch/morningcoffee/1277537085/
(注:クラウド・ファンディングプラットフォームを利用する以前の小口出資の例)

【Jo志校】
https://faavo.jp/niigata/project/9

【銚子元気娘。】
https://readyfor.jp/projects/genkimusume
(注:失敗例)


このようにアイドルの資金調達に対してクラウドファンディングを活用する流れは、
クラウド・ファンディングのブームを利用した事例として多くの人の記憶から忘れ去られることになるのだろうか?
それとも今後アイドルを応援するプラットフォームとしてクラウド・ファンディングが活用されていくのだろうか?
ここでは述べていこうと思っている。

まずはクラウド・ファンディングの概要を理解した上で、
アイドルとクラウド・ファンディングの相性が良い点について6つ述べる。




◎クラウド・ファンディングの概要



クラウド・ファンディングとは、
不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指し、ファンによるアーティストの支援、ベンチャー企業への出資、映画、フリーソフトウェアの開発、発明品の開発、個人・事業会社・プロジェクトへの貸付など、幅広い分野への出資に活用されている。
一般に製品開発やイベントの開催には多額の資金が必要となるが、クラウドファンディングでは、インターネットを通じて不特定多数の人々に比較的少額の資金提供を呼びかけ、一定額が集まった時点でプロジェクトを実行することで、資金調達のリスクを低減することが可能になる。
ソーシャルメディアの発展によって個人でのプロジェクトの立ち上げや告知が容易になり、それに呼応する形でクラウドファンディングによる資金調達が活発になりつつある。
(from Wikipedia 一部改変)


つまりクラウド・ファンディングとはプロジェクトに対してソーシャルメディアを基に情報を拡散し、不特定多数の人間から小額資金を収集することによって、プロジェクトのファイナンスを可能にするプラットフォームである。


(図引用 「コンテンツがフロー化していく時代の“体験”の価値とクラウドファンディングの可能性」)

出資者側のリターンとしては、金銭的な収益を期待する「投資型」、純粋に寄付のみを行う「寄付型」と金銭以外のリターンがある「購買型」の3種類に分けられているが、アイドルやアーティスト等のエンターテイメント分野では「購買型」のリターンが主流である。

日本ではこれらクラウド・ファンディングのサービスが
テレビなどマスメディアから注目を集めることで、順調に市場を拡大させており、2013年には8億円程度となり、CAMPFIREやREADYFOR?などのサービスが有名である。

また一方、世界でも2012年では27億ドル、2013年では51億ドル(前年比89%増)の市場予測になっており大きな市場になってきている。

日本の主要クラウドファンディング 累計支援額
(グラフ引用 「日本の主要クラウドファンディング 累計支援額 月次推移 (積み上げグラフ)」)

そして、クラウド・ファンディングがターゲットとしているプロジェクトオーナーは、以下のように
都市銀行、信用金庫、ベンチャーキャピタル、助成金によって資金調達が困難な層である。



また、クラウド・ファンディングが商品やサービスのどのステージで活用されるかは、
金融機関による資金調達が困難かつ小額資金の投資で済むアーリーステージがメインである。



(上2図引用 「町工場発! 面白ガジェットとクラウドファンディング 」)

クラウド・ファウンディングの概要は以上であるが、
当サービスがある分野の資金調達基盤となるうえで重要な事は、

・プロジェクトオーナー側に利用する明確な理由がある(→①)
・出資者側に直接金融の仕組みに対してニーズが存在する(→②)
・購買型の見返りとして魅力的な商品もしくはサービスが企画できる(→③)
・プロジェクトを応援し、口コミで広げるコミュニティーが存在する(→④)
・クラウド・ファンディングの特性と、生まれる商品・サービスの特性に関連性がある(→⑤,⑥)

ことである。


◎アイドルとクラウド・ファンディングが相性が良い6つの理由

①資金調達が難しいアイドル運営が望むサービス

先に述べたが、このサービスの主なターゲットは金融機関やベンチャーキャピタルから資金調達しづらい個人~中小企業をターゲットにしている。

avexなどの上場企業は例外として、アイドルを運営する事務所は資本金も少なく、
従業員も数人単位であることが多く、一般的に考えれば中小企業である。
芸能人などのリスクが高い商品に対して金融機関も融資しようとは思わない。

このため、アイドルの活動資金調達の手段として活用できるクラウド・ファンディングのプロジェクト・オーナー側からのニーズは高い。


②アイドルヲタクにとって望まれた直接資金で成長ストーリーに参加できるサービス

アイドルのクラウド・ファンディングを利用する出資者は主にアイドルヲタクと呼ばれる層である。

アイドルヲタクは握手券、チェキ会参加券を目当てにCDやグッズを大量購入する消費行動をしばし取るが、握手券などのイベント参加権利獲得以外でも同じ商品を購入する消費行動を取る場合も多く、それは
・CD売上のオリコン・チャートでランキングに登場することによって一般消費者、業界関係者に自分の好きなアイドルの存在を知ってもらいたい
・大部分が大きな利益にならないアイドルビジネスであることを理解しているため自分の資金を一助にしてもらい次の活動に繋げてもらいたい
というアイドルの成長ストーリーに関与したいという願望が強いからである。
(そのためアイドルヲタクの中では買い支えるという概念が存在する)

そして同時に、同じCDを大量に購入することによる材料の無駄や、購入しても小売店や流通業者によって70%近い流通費が流れていき、アイドルの運営事務所には少量のお金しか流れていかないということも理解しているのである。

そのためアイドル・ヲタクの中にはCDなどの無駄になる物理的商品を伴わず、
アイドルの成長ストーリーに関与する形で直接的に投資できる手段を望む声は以前からあった。

クラウド・ファンディングの利用はアイドルが活動する上で必要な資金を明示的に定義し、それを応援する形で小口から出資することが可能なサービスである。
つまり、出資金を基にした活動によって多くの人に知ってもらえるという成長ストーリーへの関与できるプラットフォームであることから出資者側のニーズもあると考えられるし、
実際、アイドルがクラウド・ファンディングを活用した事例で目標額に達成していることから、このニーズの存在を支持している。


③誰もが経験できないアイドルサービスへの体験を望むファン

アイドルヲタクはアイドルの成長ストーリーへの関与することを望むのと同時に、
アイドルに対してお金を払う対価として、他のファンが経験できないオリジナリティあるサービスの享受を望む傾向にある。

それは、他のファンとは違う"自身のみが経験できたアイドルとの関係性"を他人に共有し優位性を誇ることができるためである。

しかし、サービス展開するアイドル運営側にとってCDをその媒体とするには原価的な制約が存在する。つまりCD1枚当たり運営側から見れば200~300円という売上しか期待できないために、消費者側が払った値段とそれに対するサービス提供との間に大きなギャップが生じてしまうのである。このため商品を媒体とせず、直接的な資金とサービスの交換が可能になるクラウド・ファンディングのサービスは、アイドルのサービス展開の幅を広げることになる。

現在では、映画、ライブ、デビューの活動資金を獲得する場合、
映画のエンド・クレジットに自分の名前が掲載されたり、ライブ後の慰労会に参加、デビューイベントへの参加など徐々にその広がりは握手会やサイン会などという既存のサービスから変わりつつある。

そして将来的には、新規アイドルの立ち上げのプロジェクトにおけるオーディション審査員権を見返りとした資金調達の方法など提供できるサービの可能性は広がる。


④プロジェクト成立で重要なファン・コミュニティがすでに存在するアイドル

クラウド・ファンディングを活用する上で重要なのは、プロジェクトが立ち上がった時にそれをプロジェクトオーナー側だけではなく、出資者側もSNS等を利用して出資することの意味を多くの人に拡散させ応援するストーリーの場を創出していくことである。

もともと、アイドル・ファンコミュニティーはオフラインにおけるリアルの場での交流とそれを補完するためにオンライン上での非実名で活動できるTwitterを中心として、アイドルのイベントに参加した経験や感想を述べたり、アイドル文化について議論したり、その後のオフ会などの実施の共有の場として活用されてきた。

その理由としては、
・アニメなどとは異なり、アイドルヲタクは人口の1~2%と少数で構成されており、
 身の回りにアイドルが好きな人が少ない

・アイドル・イベントのリアルの場で同じファンが集合することが多く、
 それが基にコミュニティが形成される

・そのコミュニティに参加した場合、
 アイドル達の情報交換やチケットの融通などファン活動がしやすくなる

・イベント情報の提供が上手く整備されていないアイドル運営に変わり、
 ファン側でそれを共有、拡散される場としてオンラインが活用されてきた

などの理由がある。

このように発達してきたアイドルのファン・コミュニティーを利用してクラウド・ファンディングのプロジェクトについて情報を共有することがしやすくなるために、クラウド・ファンディングとの相性は良い。


⑤未熟でも新しいことに価値のあるアイドル

一般の人々から見て、アイドルは同じようなコンセプトとサービス展開によって有象無象存在すると考えられているかもしれない。そしてAKB48やももクロなどある程度人気のあるグループが生まれれば一部のアイドルの寡占化が進み、その他のアイドルは競争に負け撤退していくと考えられているかもしれない。

しかし、実際アイドルは初期費用や運転資金が少なくても活動することが可能で、マイナーなアイドルでも一定のファンが付いているのが現状である。

これは、
アイドルヲタクの一部には若いアイドルや新しく生まれるアイドルであることに価値の重きをおく層が存在し、彼らにとって、デビューイベントの参加などアイドル達にとって初のイベントに参加することが価値として重要なのである。そして彼らは市場におけるイノベーター的ポジションに存在し、そのアイドルの素晴らしさをストーリー化し、彼らのコミュニティーで伝聞させることによって、徐々に他のアーリーアダプターに該当するヲタク層を呼び込む構図になっているからである。

つまり、多くのアイドルヲタクにとってアイドルから提供される最も重要な価値は成長ストーリーをエンターテイメントとして提供することであり、成長ストーリーが停滞したアイドルより、成長速度の早いアイドルの方が好まれる傾向を持つのである。

そして新しいアイドルに価値を見出したヲタク層は常に新しい成長ストーリーを追求するために、一定期間応援していたアイドルから新しく生まれてくるアイドルに消費をシフトさせていくのである。

これは、先に述べた通りクラウド・ファンディングは大量生産品やすでに製品化されたミドルステージやレイトステージにあるものではなく、初期費用の調達が困難になりがちなアーリーステージに適合するサービスであることと一致する。


⑥ニーズ検証による迅速なサービス展開と無駄なサービス展開コストの削減が可能

アイドル・グループにおいてファンを増やして早期に損益分岐点を越え、人気を獲得するにはリーン・スタートアップ様の展開が重要である。

リーン・スタートアップとは、米シリコンバレー発の起業の新しい手法として注目を集めた、事業展開のPDCAサイクルを時間的概念を導入したものである。主にWebサービス展開で語られることが多いこの概念は多岐にわたる分野に応用可能である。

アイドル・ビジネスは数人の人間(成長途中の女性)が提供するサービスであることから、ファンのニーズを基に戦略のピボット(方向転換)やプロダクトをマーケットに対して容易に調整することが可能である。

(参考:「「リーンスタートアップ」─小さな失敗を重ねて育てる」)

また、クラウド・ファンディングのサービス利用の意義の一つとしては、

ニーズが不明な企画に対してプロジェクトを立ち上げて資金を募り、目標額に達するか達しないかが判明することは、開発・展開する商品、サービス立ち上げの前にニーズが実際存在するかどうか事前に確認することが出来ることである。

つまり、そのサービスやイベント開催を望むファンが多ければ目標額に達するし、その逆であれば目標額に達さないという明確なニーズの有無が分かるわけである。

このようなクラウド・ファンディングの特性とアイドルの製品特性はマッチしており、
700億円程度の市場に対して1,000近いアイドルが存在する状況で、なかなか独自のポジショニングや独自のプラットフォームを築けないアイドルにおいては、このニーズの確認を事前に実施でき、戦略のピボットを実施することができる。

これはつまり少ない資金を基に展開するアイドル運営側にとっては無駄なコストを削減し、ROIを向上させるためには大きな意味を持つ。

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